令和2年春季企画展「土木遺産展―関西のトンネル めぐり―」の紹介(その2)

 本展示は来年の3月中旬から5月上旬に再度開催する予定です。ご理解とご協力のほど、お願いいたします。

第3章 大正~平成時代のトンネル

ここでは、大正時代以降のトンネル8ヶ所をとりあげ、トンネル技術や機械の性能の向上、地質に応じた種々の工法の開発とともに進歩発達してきたことを紹介。

大原トンネル(静岡県浜松市)/提供:(公財)鉄道総合技術研究所
鋼アーチレール支保工を初めて採用
中山トンネル(群馬県渋川市)/提供:㈱熊谷組 国内で初めてナトム工法を採用
鍋立山トンネル(新潟県十日町市)/提供:西松建設㈱

大正時代以降、全国的にトンネルの建設がすすめられ、その技術も機械の性能の向上や、地質に応じた種々の工法の開発とともに進歩発達してきました。大正10年(1921)に竣工した東山隧道(京都府)では、掘削方法は当初、従来の日本式(頂設導坑式)でしたが、底設導坑を先進させる新オーストリア式(底設導坑式)を国内で初めて採用し、施工の効率化をはかりました。昭和9年(1934)には、着手から16年間にも及んだ湧水と断層に苦闘した丹那隧道が完成し、昭和17年(1942)には世界初の海底トンネル「関門鉄道隧道」が開通しました。昭和30年代に入ると、今までの木製支保工にかえて鋼アーチ支保工(大原隧道)を採用することで大型機械による全断面掘削法が可能となり、作業性・安全性が格段に向上しました。全断面掘進機TBMは昭和40年代に導入。昭和51年(1976)には、吹き付けコンクリートとロックボルトを併用するナトム工法が上越新幹線中山隧道で日本で初めて導入されて以降、山岳工法の標準工法となりました。昭和63年(1988)には日本で一番長い青函隧道が開通し、平成7年には着工から完成まで22年近くを要し、屈指の難工事「鍋立山トンネル」が完成しました。

第4章 トンネルと神事、トンネルカード

ここでは、一般的にはなじみの少ない「化粧木」5ヶ所(針生隧道、府県間トンネル、出合第1トンネル、新関門隧道、天ヶ瀬ダム再開発トンネル)と「貫通石」約60点、「トンネルカード」16点を取り上げました。

「化粧木」は、トンネルの入り口の上に据えられている反りかえった木材で、神域への入り口をあらわす「鳥居」、神様の「依り代」といわれています。坑口付け(安全祈願祭)などの時、坑口の上に飾られ、トンネル落成式(貫通)後に撤去されます。

ここで展示している「トンネルカード」は、明治期に建設され、鉄道遺産となった福井県、滋賀県に残る旧北陸線のトンネル群をPRするために作成された広報用の小さなパンフレットです。

トンネルカード
貫通石をはめ込んだ記念品

「貫通石」は、トンネルの貫通時に掘られた石で、「古くは神功皇后が戦いの際に敵の背後まで掘った洞窟を利用して、勝利を収め、勝利の記念に洞窟の石を持ち帰ったところ、元気な赤んぼを産むことができたという、言い伝えにより、安産の守護石となったとされています。」近年では、難関を突破して貫通したトンネルの貫通石は、意思(石)を貫くお守り」として、合格祈願のお守りや大願成就など貫通石をもつ人それぞれの願いが託されるようになっています。

第5章 絵葉書にみるトンネル

小野田 滋さん所蔵の絵葉書約120点。旧生駒隧道、丹那隧道、亀瀬隧道、千早隧道、関門隧道、折渡隧道、笹子隧道など。